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韓国のナイフ形石器 [旧石器]

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APA韓国大会のエクスカーションで一番見てみたい資料は、この資料でした。

韓国でもナイフ形石器が出土しているという話は聞いていましたが、それがどんなものかこの目で確認したかったのです。

上の写真は、朝鮮大学校の李先生が作成した図録からのものですが、皆さん、いかがですか?

素材の縦長剥片(石刃)の縁辺を残し、二側縁に調整加工が施されています。

いわゆる「茂呂型ナイフ」の範疇で捉えられる形態と言えます。

これは、日本列島内で数多く出土するナイフ形石器と同様のものと言えます。

ナイフ形石器の定義はいつどこで誰が行ったかという点については、諸説あるようですが、1953年に芹沢長介・麻生優両先生が、杉久保遺跡の報告の中で、「縦長flakeの鋭利な刃部を一部分残して周辺の片面にあらいretouchを加え、先端を尖らせた形態をknife bladeと呼ぶ」と定義されものが、最初だと思うのですが、その後は、切出形石器や台形様石器などもナイフ形石器として取り扱うなど、整理がついていない状況が続いているということもあります。

そのナイフ形石器の評価を巡って、1月22・23日に石器文化研究会の25周年シンポジウムで議論を深めようということになっています。

日本列島でナイフ形石器と呼ばれている形態の石器は、世界中にあるということなのでしょうか、どうなのでしょうか?

世界的な視野で見直すことも必要になっているのでしょう。

石器の名称が共通の言語になっていないという批判もありますが、日本だけでの議論からより広い視点が必要とされますよね。

6月のAPA日本大会などで、多くの海外の研究者に列島の旧石器を説明する時にどのような用語を用いるのか、考えてしまいます。

いずれにしても、ナイフ形石器を多角的に検討することは必要なのでしょう。

シンポジウムでの議論に期待しましょう。

当日、多くの方のご参加を得て、前向きな議論が展開されますことを希望します。

 

 

 

 


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福島 日出海

「ナイフ形石器の定義は・・・1953年に芹沢長介・麻生優両先生が、杉久保遺跡の報告の中でされたのを最初だと思うのですが」とありますが、同年の8月30日から9月10日までの第四回国際第四紀研究学術会議へ杉原荘介先生が送られた「日本における石器文化の階梯について」の中に、茂呂文化として茂呂遺跡のナイフ形石器を図示され、「黒耀石で作ったBladoを主体とし、細部加工は保持のために行われる所謂Backed bladeのそれである。従って剥離によって生ずる自然の鋭い縁辺が石器の刃の役をなす。」とあります。Backed bladeは国際学会で周知の名称と思われます。ただ、この場合、「●●とはこのようなものである」という書き方ではなく、茂呂タイプの解説的ですが、その後に発見されるナイフ形石器の定義的な説明にはなっていると思いますが、如何でしょうか。
 もっとも、芹沢・麻生報告は、昭和28年度の文部省研究助成金とあるだけで、どちらが先なのかは分かりませんが、「ナイフ形石器の定義はいつどこで誰が行ったかという点については、諸説あるようですが」の諸説にはいっているのでしょうね。
 おくれましたが、今年もよろしくお願いします。
by 福島 日出海 (2011-01-18 11:55) 

ジュンクワ

マシさん 元気そうでなによりです。
ナイフ形石器の定義や名称の変化などの研究史はこの土日に開催されるシンポジウムで議論される予定です。
研究の黎明期に原稿執筆と出版・刊行のタイムラグなど知られざる学史がそこにはあったのでしょうね。
by ジュンクワ (2011-01-21 00:05) 

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