旧石器学会シンポ 朝日新聞の記事 [旧石器]
朝日新聞の７月５日付け朝刊に先日の日本旧石器学会のシンポジウムが記事になりました。先日、港川人の記事を書かれた渡辺記者の記事です。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201007050091.html
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その遺跡、旧石器時代？ 遺跡発見捏造発覚から１０年
砂原遺跡の出土品が日本旧石器学会で展示された＝東京・神田駿河台の明治大学
東北地方を中心とした旧石器発見の捏造（ねつぞう）が発覚し１０年。白紙に戻った列島の人類史の始まりはどこまで解明できたのかをテーマに、関連する学会が５～６月に研究集会を相次ぎ開いた。浮かび上がったのは、依然として解決しない「あいまいな遺跡」の存在。発見者が「列島最古級」などと発表し、報道されたが、疑念を抱く研究者の多い遺跡だ。日本旧石器学会は対応策の検討を始めた。
■出土状況、評価二分 続く議論
「私たちは評論家ではありません。傍観者であってはいけないのです」。６月２７日に東京であった日本旧石器学会のシンポジウム「旧石器時代研究の諸問題―列島最古の旧石器を探る」の会場に、稲田孝司岡山大名誉教授の厳しい声が響いた。
稲田さんは、二つ遺跡の名前をあげ、その「成果」についての「あいまいさ」を指摘した。１０万年ほど前の石器２７点が見つかったと２００３年に報道された長崎県の入口遺跡と、約１２万年前の地層から石器２０点が発見されたと昨年９月に報じられた島根県の砂原遺跡。 「日本列島で一番古い遺跡が見つかったんだと世間は思っている。だが、入口では石器と断定できる資料は見あたらず、自然の破砕礫（はさいれき）と理解する方が合理的。砂原では確実に人工の石器と判断できる資料はないと思うが、石器と断定した根拠となる実測図を調査団はまだ示していない」。稲田さんは力を込めた。 それに対し、砂原遺跡を調査した松藤和人同志社大教授は「欧州の石器学の知識では、アジアの石器は理解できない」と反論した。欧州とアジアでは違う人類がいたのだから、石器の特徴が違うのは当然だとの考えからだ。「このような議論はいくらやっても結論がでない」（松藤さん）と、議論は平行線をたどった。 旧石器時代を考える前提はこの１０年で大きく変化した。
捏造のベースにあったのは、原人―旧人―新人という人類の進化は世界各地でおきたとの仮説だった。捏造事件では、数十万年前の古い地層に埋めた縄文時代の石器を掘り出し、原人の石器だとされた。それを研究者たちは「日本列島の人類は原人段階から手先が器用だった」などと解釈した。 それに対して近年、人類はアフリカで進化し、繰り返し世界に拡散したとの仮説が定着した。
遺伝子の分析が根拠で、現代人が東アジアに到達したのは５万年前ごろとの見方が強まった。日本列島に到達した時期を特定しようとの研究も進み、４万年ほど前と考えることでほぼ一致するようになっている。 だがそれ以前、現代人より前の人類となると、研究者がそろって認める遺跡は一つもないのが実情だ。石器は原始的な段階で、自然石との見分けがつきにくい。石器であることに異論はなくても、点数が少なかったり、出土状況や年代が特定できなかったりと何らかの難点があるのだ。稲田さんと松藤さんの論争が明らかにしたのは、石器や遺跡を認定する一致した基準のないことだ。
関東地方の研究グループのリーダーの諏訪間順さん（小田原城天守閣学芸員）は条件を設けて、それを満たさない場合は学術的評価の対象としないことを提案した。
（１）明確な加工痕跡のある石器が複数出土
（２）石器のように見える自然石が混入するおそれのない立地
（３）明確な出土地層――などを想定する。
ただ、そうした考古学者の論争や提案にも首をかしげる研究者はいる。人類学者の松浦秀治お茶の水女子大教授はいう。「日本列島にいたのが欧州とは違う人類だとしても、中国にいた人類とは同じでしょう。その中国ではだれが見ても人間が作ったと認める石器が見つかっている。現代人以前の人類とはいえ、明確な意思をもって石器を作っている。そうした石器が見つからない日本列島には、どのような人類がいたと想定しているのでしょうか」 様々な議論を受け、同学会は検討や議論の場を設ける方針だ。
会長の小野昭明治大特任教授は「割った石なのか、割れた石か。グレーゾーンは大きく、決してゼロにはならないだろうが、議論の場を作りたい」と語った。（渡辺延志）
「何もしてこなかったと言われても仕方ない。」
何もなかったことにしてきた、と言いたいです
by ｈ (2010-07-21 19:41)