韓国 李隆助先生から 日本の旧石器研究者への震災見舞いのメッセージ

韓国　李隆助先生から　日本の旧石器研究者への震災見舞いのメッセージが届いています。

すでに八ヶ岳さんのブログにも掲載されていますが、こちらでも掲載します。

李隆助先生は、本文中にもあるように日本の旧石器研究者との親交も深く、昨年の第３回アジア旧石器協会韓国大会において、次期、私たちにとって、最もアジア旧石器協会会長に選出されている方です。

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去る３月１１日午後に発生した東日本大地震によって貴国に及ぼした大きな被害に対し、どのようなご挨拶をすればよいのかわからず、心苦しい限りです。
ちょうどその時私は、同志社大学の松藤教授ご一行とともに共同研究を進行している最中であったため、その心痛はより一層深いものでした。

歴史史上最大級の大地震により、皆様とご家族、そして同僚の方々が受けられた被害は想像を絶するものでしょう。新聞やテレビなどの報道を通じて我々に伝えられる情報のみからでは、一人一人のご様態を確認することが難しく、ただ皆様のご無事を祈願することしか出来ない自らの力の無さに葛藤を覚えずにはいられません。心から、皆様の心身共なる平穏をお祈りしますとともに、この困難を一刻も早く克服することが出来ますよう心よりお祈り申し上げます。

私は去る１９８９年に初めて日本を訪問し、９２年には木村教授の組織による札幌国際会議に参加した後、多くの友人に出会ったことを契機に、貴国との学術交流を開始することとなりました。その当時、大変親切に接して頂いた多くの日本研究者のお陰により、素晴らしい遺跡とともに、非常に美しく広大な光景を眺めることが出来ました。その様子は目の裏に厚く焼きついており、今も鮮やかに思い出されます。自然を愛し、秩序を重んじる貴国の国家精神から、多くのことを学ばせていただきました。このような思い出の一部を、ある刊行物に執筆させていただいたこともあります。また仙台市では、貴国の旧石器研究を開拓し進展を導いた芹沢教授とともに、日本の三大名所の一つである湖水のほとりで大変美味しい食事を頂いた記憶が思い起こされます。その場所も今回の大地震によって被災していないかどうか、気にかかっております。

また、私の住まいである忠清北道と姉妹都市である山梨県にも深い思い出があります。当時、山梨県立博物館の館長を勤めていらした大塚初重教授が、初めての試みとして、スヤンゲ遺跡の遺物を明治大学で展示しようとお声をかけてくださいました。それをきっかけとして安蒜教授との強い因縁と熱情的な努力により、２００４年に“韓国スヤンゲ遺跡と日本の旧石器時代”という題目で特別展を開催することに至り、貴国に多くのお心遣いをして頂きました。この場を借りて、再度深くお礼申し上げます。

２００８年度には九州宮崎県で再度スヤンゲ国際会議を開催する企画を立てましたが、安蒜先生と橘先生をはじめ、多くの方々のご配慮とご協力の下実現することが出来ました。深い感謝の気持ちとともに、一方で大きな負担とご迷惑をおかけしましたことを、お詫び申し上げたく存じます。これらの契機をもとに、韓国のスヤンゲ遺跡が日本の旧石器研究において、深く親しい関係を結ぶことが出来ましたのも、皆様のご厚意によるものであると感じております。

このような全ての出来事が、日本にいる多くの友人たちの努力と激励、そして深い友情により成り立ったものであり、言葉では表現しきれない感謝の念を、今一度心よりお礼申し上げたく存じます。しかしこのように親密な関係にある日本の皆様に、こんな挨拶状のみをお出しすることしか出来ないことに無力感を感じるとともに、大変申し訳なく思っております。

世界大戦後、著しく早い速度で復旧を果たした日本の皆様の真摯な結束力と根強い努力は世界中を驚かせ、また励みを与えてくださいました。この度の地震の被害にも、そのような力によって対処していかれますことを心から信じ、また応援しております。
再度、感謝のお言葉とともに、皆様のご無事と、一刻も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

２０１１年３月１５日　　　　　　　　　　　李　隆　助　拝 (財)韓国先史文化研究院理事長